【環境ミニ講座5.6】 地下水の利用と安全 

                                                                      2023/ 8/5 第22回

 世界の総取水量のうち地下水依存量は約20%の6000~7000億tである。日本も15~

20 %を地下水に依存してきた。地下水は河川水より安価で清澄であることが多い。

 そのため、とりわけ工業用水の大量くみ上げが行われてきた。地下水の大量くみ上げ

は1960~1970年頃が活発になり、地下水位は1970年頃は最悪の-10~-50mも低下した。

地盤沈下は東京都は1m以上、最大4m強(江東区)であった。

 地下水が粘土層を挟む軟弱な地層にあるとき、地下水くみ上げは地盤沈下を伴いやす

い。なお、岩盤地域や硬い堆積層では、地盤沈下は起きにくい。地下水の取水規制で地盤

沈下は止まったが、その後、地盤は沈下したままである。なお、地下水賦存量は間隙率を

0.15、地下浸透率を20%程度として計算することが多い。

 

 日本では森林や水田に浸みこんだ雨水の多くは地下水となる。日本の汲みあげ可能な

地下水量は数千億tもある。 全ダムを満杯にしたときの水量が200億tであるから、地下水

は量的に潤沢である。水不足を心配して「もっとダムを」は必要ない。地下水を利用すれ

ばよい。 

 「名水」の大部分は地下水から得られるように、地下水の水質はきわめて清澄である

。 庄内平野の人たちは地下水を利用していた。ダムの完成とともに、地下は封印されダ

ムの水利用が強いられた。その結果、夏は冷たく冬は暖かい水をあきらめ、おいしい水を

あきらめ、高い水道料金を払うはめになった。 

 また、福島第一原発事故(2011年) で、川を水源とする水道水には放射性ヨウ素131が

検出され取水停止になった。いっぽう、地下水を水源とする水道水には放射性ヨウ素は検

出されず取水はつづいた。




【コラム5.6】地下水の中の地下鉄

 地下水を汲みあげないから、たとえば地下鉄の駅や線路よりも地下水位は高くなり、

今や地下水の中を走る電車が増えている。いっぽう、水中の地下鉄やプラットホームには

浮力が働いて線路などを押しあげている。そこで、ピアノ線などで線路などを基盤岩につ

なぎとめている。このような水中の地下鉄は巨大地震に安全であろうか。

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