【環境ミニ講座5.4】 長良川河口堰 

 


                            2023/ 6/25/第20回

 長良川の水を工業用水に使うために、河口堰が計画された。計画が具体化したころは工

業用水の需要は冷えていた。それでも、国交省は堰の建設はあきらめなかった。

 国交省は伊勢湾台風による洪水害などをひんぱんに引き合いに出して、堰の必要性を作

文した。すなわち、大量の降水を流すために河床を浚渫する。浚渫により海水が俎上して

、塩害を起こすから、河口から5.4㎞の堰で俎上をくいとめるとした。洪水時には堰を開

門して、洪水をすみやかに海へ流す。このようにして利水には不要とされた河口堰は、治

水には必要とされ、「そのまんま」再登場したのである。


 工業用水の利用はないにもかかわらず、1995年に堰を閉じた。ただちに、堰周辺にヘド

ロが1mも堆積し、魚介類と地場産業が大きな被害をうけはじめた。

 なお、2004年の台風で計画高水を上回る洪水が流下したが、洪水害は発生しなかった。

また、堰がないと塩水が河口から30㎞も俎上するとしていたが、堰の建設前も後も塩害は

起こっていない。

 治水にも利水にも不要なこの堰の維持管理に毎年10億円も流しこむのは「税金の悲劇」

である。堰を開門すれば、アユが踊る真の「清流の国づくり」が実現するのである(富樫

、2017)。




【コラム5.4】災害時の用水確保

 水源をダムや河川水に限定すると、地震などの災害で浄水場が停電するだけで、あるい

は給水管が1ヶ所破損するだけで、用水の確保は困難になる。給水車で運べるのはせいぜ

い飲み水である。料理、洗濯・入浴などの用水は運べない。

 以下の準備は災害時の水確保に有効ではなかろうか。

 すなわち、災害時に避難所に指定される小中高校や公共の施設などに、5~20mのパイ

プを地下水脈に打ちこみ手押しのポンプを設置して、災害時に電気なしに、地下水が汲み

あげられるようにしよう。また、生徒と地域の人は井戸の利用・管理をつうじて、洪水防

止と地下の水環境を考える輪を拡げよう(瀬戸、毎日新聞(みんなの広場)、2016年5月8日

)。

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