2023/ 6/5 第18回
日本の年降水量は世界平均の2倍弱の1700mmである。また、降水は季節的な偏りが強く、地形は急峻である。このようなとき治水と利水のために、流出の平準化が不可欠である。
日本の総国土面積37.7万km2に1年間に降る水量は6,500億t(tはトン、1000㎏、1㎥の水の重さ)である。これから蒸発散2300億tを引いた水資源賦存量は4200億tとなる。図1に示したように、降水の3分の1以上は洪水としていっきに流出する。この流出は、氾濫、がけ崩れ、道路の寸断、家屋の流亡、溺死などの重大な被害をもたらすことが多い。
2300億tの洪水量に対して、日本の治水ダムの容量はわずか24億tしかない。ダムによる治水には限界がある。そうであるから、流域の森林や水田の土地利用をつうじて大雨を貯水し大地に浸みこませ、ゆっくり流しだす「流出の平準化」が重要なのである。
いっぽう、日本の各種用水量は年あたり809億tである。これに対して、日本の全ダムを満杯にしても200億tにしかならない。降水の供給が無ければ全ダムは4ヶ月で涸れることになる。ダムによる用水確保にも限界がある。ここでも「流出の平準化」が重要なのである。
(おまけ) 流出の平準化の意義を理解するために以下の問いは如何であろうか。100の面積に降った雨が、全く浸みこまずに、低地の1の面積に集まったら深さはいくら? ⇒ 100倍、すなわち10mmの雨なら ⇒ 深さ1m(床上浸水)、 100mmの雨なら ⇒10m(屋根上浸水)。
【コラム5.2】こんな誘導には注意しよう―その2
1)軍拡のムードを誘導したいとき、「津軽海峡を中露の軍艦が通った」と発信する。これだけで、“中露はけしからん日本も軍拡を”のムードが、醸される。このとき誘導者は国際法上通過は認めあっていることを知っていても言わない。
2) 憲法改変、再軍備を進めたい人は、安倍元首相の死を機に「安倍の遺志を継ぐ」と一斉に唱え始めた。安倍おろしをやっていた人までも「安倍の遺志を継ぐ」と唱え始めた。
改変・軍拡が政治信条なら自己の責任で発案・主張すればよいのに、なぜ他人の「遺志を継ぐ」を前面に出すのか。安倍元首相は国会と民主主義を軽視・ねじ曲げた人なのに、あろうことか彼を国葬に!? 寒々しい限りである。
3)無策・無能の判断をされたくないとき、「道半ば」を強調する。三本の矢の二本しか射ていないからと、評価を先延ばしさせる。
4)生活保護費を削るムードを醸したいとき、「仕事しないでパチンコやギャンブルに費やしている」と発信する。生活保護費の総額(3.7兆円)のうち、不正受給は0.5%である。政財界による税金浪費より、適正に運用されていることは言わない。
5)外戦や内紛で犠牲になった市民の冒頭に「何の罪もない(市民)」とTVなどのレポーターが付け加えることがある。国の功罪に市民が無関係のはずがない。また、「何の罪もない市民」は無力・従順であるとする上から目線ではないか。さらに、戦争に白、黒のレッテルを安易に貼り、両国の主張を平行線に導き、対話を閉ざす目線でもある。
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