【環境ミニ講座4.9】 温暖化を阻止しているのは森林だけ 


    2023/2/15、第7 

温暖化阻止のために大気のCO2を削減しなければならない。大気CO2を削減しているのは森林の幹の増大と、海洋への溶解だけである。このうち、制御できるのは森林の幹の増大に限られる。大気へのCO2排出を抑制しても温暖化を遅らすだけで、温暖化は阻止できない。

日本は「京都議定書」で大気へのCO2 排出(C量、年当り)を約 2000t抑制する約束をした。このうち1300tは日本の森林の幹(材)による大気のCO2 の「みかけ(net)」の削減であるから、温暖化を阻止したといえる。残りの700万t強はチェコ、ポーランドなどからCO2排出権購入による書類上の“クリアー”であり、大気のCO2 削減ではない。 

なお、日本の全森林の幹の現存量は30t(乾量)程度である。現在の日本の森林は成熟・過密のために、幹の増加量は2800t(乾量、年あたり)にとどまっている。幹の乾量で2800tは、乾量の約47%C量であるから、C量で1300tとなる。この1300tが上述の京都議定書の「みかけ(net)」の削減量である。


さて、森林は成熟しやがて過密になる。これが進むとCO2をみかけ上吸収しなくなる。では、どうすればよいか。森林を「若く」保とう。そのために間伐をして幹のバイオマス増加の余地をつくろう。この余地は、森林による大気のCO2の吸収量を増やし、呼吸による放出量を小さくする。このとき、残された幹は増大のみならず、質を高め、幹の経済的価値も高める。

森林への手入れ、すなわち間伐して成熟や過密を解消すると、幹の現存量30t(乾量)の年あたりの増加量は最大で6000t(乾量)になるようだ。 このとき増加した幹のC2800tは日本の森林による、大気CO2の最大の吸収量、すなわち最大の削減量でもある。これは京都議定書の約2000tを優に超える。

なお、間伐材を適切に取り扱わないと、せっかく幹に吸収されたCが大気へ戻ってしまう。それでは間伐材はどう取り扱えばよいのか。次回に考えてみよう。

 

 

【コラム4.9】「原発はCO2出さない」はホント ?

ウランの核分裂は確かにCO2出さない。核分裂時の「直接的なCO2排出」だけではなく、燃料採掘・輸送、設備建設・運転時などの「間接的なCO2排出」も考慮するとどうなるか。1Whの電力を生むのに風力は、0.821.9gCCO2として排出している。さらに、太陽光5.2 16g、水力1319g 、原子力1949g 、石炭火力84156gである。

すなわち、原発の間接的なCO2 排出は石炭火発についで大量である。これでは原発は温暖化防止に有効とはいえない(ヤコブソン教授(環境工学)米スタンフォード大(2008)、しんぶん赤旗2022101日より)。

 

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