2023/2/5 第6回
大気はCO2をC(炭素)量で8000億t含む。図1の1)は化石燃料の燃焼により、CO2 がC量で90億t大気へ毎年排出されていることを意味する。このCO2 が地球温暖化を激化している。なお、大気の容量を考えると、90億tはCO2濃度(v/v)を毎年4.5ppmずつ増加させるはずであるが、実測値は2ppm弱である。なぜ4.5ppmではないのか。 排出された90億tのCO2のC量のうち、大気へ蓄積する量は半分弱の40億tであるからである。さらに、森林破壊や火災などで大気へ排出されるのは幹のCからのCO2だけでない。土壌有機物、C量は幹の2倍以上、も酸化されてCO2として大気へ排出される。また、化石燃料は採掘の採算を無視すれば今後約1000年は枯渇しそうもない。
図1.生物圏におけるCO2と有機物の存在量(球体)、
および年あたりの流れの量(矢印)、 単位はC量で億t(瀬戸、原図)
1)化石燃料から排出 2)大気へ蓄積 3)森林の幹のみかけの光合成による吸収 4) 5) 海洋へ溶解 6)海洋から放出
世界の森林40億haの幹の量はC量で 0.8兆tである。この量は大気のCO2 のC量0.8兆tと同じである(図1)。
幹と土壌に ha あたり700tCの蓄積になる。3億ha の森林を回復すれば2100億tの Cが幹と土壌に蓄積する。これにより大気のCO2 濃度(v/v) は現在の400ppmから産業革命期の280ppm近くまで削減できる計算になる。温暖化にあまり責任の無い南半球の国々に、先進国が森林回復を援助することは北の工業国にも大いに益することである。
【コラム4.8】
1) やって良いこと、悪いこと
海洋には大気の約50倍のCO2が溶解している。さらに、2400億tが大気から海水へ溶解し、同じ量が海水から大気へ放出されている。図1を見ていると誘惑にかられる。すなわち、海洋への溶解が少しでも高まれば、大気のCO2は減って温暖化が和らぐのではなかろうかと。たとえば「海水に鉄」をまいて藻類ブルームを起こし大気のCO2を藻類に吸収させる提案・試みはすでに始まっている。しかしながら、未知で繊細な生物圏を人が制御できると期待すべきではなかろう。したがって、「海水に鉄」は如何なものかと思う。
なお、「未知で繊細な生物圏」をもちだすまでもなく、「海水に鉄」は実施する前からナンセンスである。
たとえば、大気のC を閉じこめた藻類はどうするの? それ現実的?
2)まだある温室効果ガス
生物圏の大気の CO2濃度(v/v)は 2016年403ppmをこえた。CO2だけが温室効果ガスではない。さらにメタン(CH4), 一酸化二窒素(N2O)、フロン(HFC)なども温室効果ガスである。これらの温室効果をCO2に換算すると137ppmになる。この137ppmと403ppmのCO2を合計すると 540ppm となる。 なお、水蒸気(H2O)も温室効果ガスであるが、削減の対象にはしていない。冬の夜間は雲がなく空気が乾燥してH2Oの温室効果が低くなる。このとき「底冷え」する。逆に、雲が多く湿度が高いと底冷えが弱まる。
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