【環境ミニ講座1.5】 地球の肌―土壌―


 2023/1/25 5                    

生物圏の土壌は地球を包む肌である。豊かな土壌は100年以上もかけて生成する。その土壌が不適切な土地利用のため、ヒリヒリとした痛みを訴えているではないか。

世界の土壌をみくらべると色がずいぶん異なる。土の色の違いはどのように生じたのであろうか。この問いから土壌学の入り口を覗いてみよう。土壌の色を決める三成分を念頭におこう。「赤」は酸化された鉄Fe2O3、「白」は 二酸化ケイ素SiO2、「黒」は有機物の色

 

熱帯多雨林の土は「赤い」。高温多湿のため白を呈する二酸化ケイ素は溶脱し、黒を呈する有機物は微生物によってすみやかに分解され、残ったのは酸化された鉄の赤錆びである。この土をラテライトlaterite(赤土)という。

温帯・半乾燥地域のウクライナ草原などの土は「黒い」。夏は高温で植物の光合成は活発である。雨が少ないから、微生物は有機物を分解しにくい。そのため有機物が大量に蓄積し、黒を呈する。なお、土壌水中の炭酸カルシウムは全層を中和し、肥えた土壌を生成する。「世界のパンかご」といわれるゆえんである。この土をチェルノ-ゼムchernozem (黒土)という。

北方針葉樹林のタイガや北のツンドラの土は「灰色」。強い酸性のために、鉄は溶脱し、二酸化ケイ素と有機物が蓄積・混合して、灰色を呈する。この土をポドゾルpodzol (灰土)という。

 

肥沃な土壌は多孔質の団粒である。団粒は、表層に窒素やリンなどの栄養塩類を保持し、空隙には水と空気が出入りし、土壌を柔らかく肥沃にする。有機物がなくなると、団粒は細かい粉状になり、風で飛ばされたり、硬くなって、肥沃さを失う。テキスト ボックス:

 

 

 

 

【コラム1.5「月から地球に土壌を持ち帰った」はなぜ不適切な表現か

広辞苑第三版(岩波書店)では土壌を「地殻表面の岩石が崩壊・分解して地表に堆積し、それに動植物の遺体が加わって生成したもの」と定義している。すなわち、月には生物はいない。したがって、持ち帰ったものは岩石の風化物であって、土壌ではない。

 

P.S. ウクライナの国旗の上半分は晴天の「青」、下半分は実った小麦の「黄」を表す。潤いの水、大気、土壌(チェルノーゼム)が「世界のパンかご」を支えている。隣国にはこの「パンかご」を愛でるどころか汚染・破壊している自称軍事大国のバカ大統領がいる)。

コメント