太陽系は46億年前にできた。こういわれても「億年」を感ずることは難しい。そこで、太陽系が誕生した46億年の歴史を1年間に短縮してみた(表1)。1月1日午前0時に太陽系ができ、現在を12月31日午後12時とすると、どのような歴史が見えてくるか。
地球が冷えて、最初の生命(嫌気性細菌)は3月下旬の海で誕生した。これは海水に溶けていた有機物を食べる従属栄養の細菌であった。5月下旬に光合成をおこなう独立栄養の嫌気性細菌が、やはり海で誕生した。この菌は光合成によりO2(分子状の酸素)を発生し始めた。O2の発生は好気性細菌の誕生(7月下旬)を促し、やがて、上空にオゾン(O3)層
を形成し始めた。オゾン層が形成(11月下旬)されると何が起ったか。生物の上陸である。なお、オゾン層のオゾンは0℃、1気圧では3 mmの厚さの液体である。これが20~30㎞上空にフワーッと拡散して、紫外線を吸収して地表を守っているのである。
6500万年前(12月25日)、恐竜が絶滅した。巨大隕石(直径10-⒖㎞)がメキシコのユカタン半島に激突(秒速20~30㎞)し、高さ300mの津波が発生したとされている。
さて、現生人類の出現(12月31日午後11時37分)は23分前、農耕の開始は1分前、産業革命は2秒前の出来事であった。
表1. 地球と生物の歴史
年前 出来事 地球の歴史を1年間とすると
46億 太陽系(太陽と地球などの9つの 1月1日午前0時
惑星)の誕生、地球は数千℃の
熱の塊、O2は皆無
35億 最初の生命(嫌気性細菌)が海に誕生 3月下旬
27億 光合成をおこなう嫌気性細菌(シアノ 5月下旬
バクテリア)の誕生、O2の発生開始
20億 好気性細菌の誕生 7月下旬
4億 脊椎動物(魚類)の出現、オゾン層 11月下旬
の形成、生物の上陸
6500万 恐竜の絶滅 12月25日
20万 現生人類の出現 37分*
1万 農耕の開始 59分
250 産業革命 59分58秒
0 現在 12月31日午後12時
*これ以降は12月31日の午後11時台の出来事である。 (瀬戸、2006より)
【コラム1.3】人間は地球の歴史を逆流させる!?
こういわれたらあなたはどのような例を考えますか?
1)セメント(主成分CaO)は、石灰石(CaCO3)をロータリーキルンで加熱してCaOとCO2に分解して得られる。これは35億年以上前に行われたCaO+CO2→CaCO3 の逆流である。
2)冷蔵庫やクーラーなどの冷媒のフロンガスはオゾン層を破壊する。オゾン層でカットされていた紫外線は、陸の生物を海に逆流させる。
3)石油石炭などの化石燃料を燃やすことはCO2の充満した大気に逆流させる。
4)森林などの発達とともに、土壌が形成された。森林などの伐採はこの土壌を消失させ、地面の表層を荒涼とした岩石の風化物に逆流させる。……
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